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カカオの第二の生命~ カカオハスク茶碗



今回は、小石原焼「森山寛山窯」とコラボした、カカオハスクを使った茶碗の開発経緯や、カカオハスクを利用した茶碗の魅力、製作過程、そしてその職人技と持続可能な美しさについてお話したいと思います。


カカオハスクとは?


カカオハスクは、カカオ豆を焙煎後、選別する際に生じる殻の部分です。このカカオの殻はチョコレートにはなりません。上質で新鮮なものはお茶のようにカカオティーとして利用できますが、すべてを使い切ることができず、廃棄されることもあります。しかし、このカカオハスクには多くの有用な特性があり、最近では、カカオハスクを再利用して染料、紙、肥料など、環境に配慮した製品が次々と生まれています。


森山寛山窯さんとの出会い


新しいブランドを立ち上げる過程で、カカオハスクから茶碗を作れないかと思い立ちました。そして、昔からの知人である小石原焼の職人、小野窯元さんに相談しようとしていた矢先、2023年7月10日に九州北部を襲った大雨。小石原焼の窯元が多くある福岡県東峰村では、11軒もの窯元が被災し、小野さんの工房と窯も全壊してしまいました。本当に胸が痛む出来事でした。しかし、小野さんと「復興したら必ず作りましょう」と約束し、彼の親戚である森山寛山窯さんをご紹介いただき、開発がスタート。この一歩が、カカオハスク茶碗を実現させるための出発点となったのです。



釉薬作り


まずは、カカオハスクは釉薬になるのか?から始まりました。釉薬とは、陶器を作る際、陶器の表面を覆うガラス状のコーティングのこと。美観、耐水性、強度と耐久性の向上、化学的保護の役割があります。カカオハスクを釉薬に利用するためには、まず灰にする必要がありますが、これが本当に大変でした。水分含有量とハスクの密度に加えて、高湿度の環境が影響し、灰にするまでに2日間燃やし続けなければなりませんでした。


なんとか灰になったカカオハスクと長石や石灰などと混ぜ合わせ、試行錯誤を繰り返し、最適なレシピ完成。微妙な材料比率の変化によって、色合いも変わります。


レシピが決まったら本生産スタート。まず水を加えて撹拌し、次にろ過します。そして、上澄み液だけをすくう。このプロセスを数回繰り返します。


数時間から一晩以上、熟成させて釉薬が完成します。


日本の職人技と美


カカオハスク茶碗には、日本の職人の卓越した技術と美意識が反映されています。日本の陶芸は、長い歴史と伝統を持ち、その技術と美しさは世界中で高く評価されています。これらの技術が結集したカカオハスク茶碗は、日本の美と職人技の結晶なのです。


例えば、成形の段階では、職人の手の感覚が重要です。粘土の微妙なバランスを取りながら、形を整えていく技術は、一朝一夕では習得できないもの。また、釉薬の選定や施釉の技術も、職人の経験とセンスに大きく依存しています。今まで使ったことのないカカオハスクという新しい素材を取り入れ、伝統的な技法を駆使して美しい茶碗を作り上げていただいた、森山窯元さんには、本当に感謝しています。


形状へのこだわり


カカオごとのカカオ湯は、板チョコレートお湯で溶かし茶筅で点てて作るので、溶けやすく、点てやすい平茶碗という形状を考えました。持ちやすさ、カカオの香りの出方、見やすさ、機能性も重視。素材の特性を活かし、自然な風合いと美しさを引き出すことにこだわりました。使う人が毎日の暮らしの中で心地よく、そして特別な時間を過ごせるようなシンプルなデザインを目指しました。


カカオの第二の生命とも言えるカカオハスク茶碗は、職人技と持続可能な美しさを体現した製品です。自然の資源を有効活用し、環境に優しいこの茶碗は、私たちの日常に新たな価値をもたらしてくれるはず。ぜひ一度、お店でカカオハスク茶碗を手に取り、その美しさと魅力を感じてみてください。

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