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カカオマスタークラス in ドミニカ共和国



ちょうど1年前、ドミニカ共和国で開催されたカカオマスタークラスに参加しました。


世界中からカカオ関係者が集まり、発酵、乾燥はもちろん、栽培についての植物学から物流やマーケットについてなど、8日間にわたり朝から晩まで、みっちり学習するプログラムです。


最初は好奇心で参加を決めたのですが、日にちが近づくにつれて、ネイティブの中で講義についていけるのか、まず行ったここもないドミニカ共和国に無事にたどり着くことができるのかなど、不安いっぱいで出発しました。結果としては、そんな不安さえも忘れてしまうほど、とても素晴らしい体験と仲間に出会うことができた、かけがえのない時間となったのでした。



講義内容;

・歴史

・植物学

・世界の生産国

・農園管理

・収穫後の処理(発酵、乾燥)

・認証

・環境保護

・マーケット

・輸送と物流

・半完成品

・品質と味覚


この講義に加え、移動中にも毎日各国のチョコレートテイスティング、お互いの情報交換など、寝る時以外は皆と一緒に行動しているため、学生時の部活のよう。カカオ農園経営者やメーカーオーナー、ショコラティエ、教授など多種多様なカカオ関係者が参加しており、皆カカオへの情熱がものすごく、四六時中カカオの話をして過ごしました。



ドミニカ共和国のカトリカ・ノルデスタナ大学と現場での講義を交互に行いながら、プログラムが進んでいきました。現場での実践があることで、頭の中で知識をリンクさせることができ、本やネット上で学ぶ以上に身になり、またその場で質問できる環境がなにより貴重でした。



こちらはいろんな発酵パターンを実験したもの。発酵や乾燥などプロセスだけを見るのではなく、栽培環境との関係性や内容も一緒に考えることがとても重要と、カカオ植物学の講師サーラは何度も強調しており、各国それぞれ独自の環境に合わせた栽培が大事なことだと改めて再認識したのでした。



実践講義の現場は、ゾルザル・カカオ。チャールズ・キルヒナー博士が2012年に創業した、自然保護と経済活動の両立を目指して立ち上げられた、世界でも有数のスペシャリティカカオ会社です。



多くのチョコレートメーカーが惚れる素晴らしい豆を生産しています。高品質の豆はやはり手間のかけ方と職人魂があり、すべての工程において、計算された仕組みで、その時々の発酵状況において、判断基準を明確に持っています。これも、長年試行錯誤した結果だと、チャールズ博士。



上段から順に発酵箱の小窓から次の箱へ豆を移動させいきます。豆全体に空気がいきわたり、発酵を促すよう工夫されています。



発酵した豆は、1~2日寝かせた後、乾燥していきます。画像の通り、豆が重なったりせず、きちんと平らに広げられ乾燥されています。一般的な豆を取り扱っている別の場所も行ったのですが、豆が山盛りになっていたり、定期的に回転せずに長期間放置されていたりと、結果的に豆全体が十分に乾燥できず、最終的には早く水分を飛ばすために現地でローストしていたのは驚きでした。世の中の苦いチョコレートは焙煎し過ぎだと思っていましたが、現地と二重でローストすることで、苦味が強くなるという理由もあるのかもしれないと思いました。やはり、現場に来てみないと真実を知ることはできないですね。



毎日、発酵施設に行き、実際に目で見て香りを嗅ぎ、どのように日々発酵具合が変化するのか、体験しました。五感を使って学習することの大切さ。再実感。



マスタークラスの中盤では、ゾルザルが所有する野鳥の保全区域へ一泊旅行をしました。ここでは環境保護と農業生産の持続可能性を両立させながら、カカオ栽培を行っています。


会社名にもなっているzorzal(ゾルザル)とは、ツグミ科の鳥、特にゾルザル・パルド(英名:Bicknell's Thrush)を指します。この鳥は北米の一部地域で繁殖し、冬季にはカリブ海地域、特にドミニカ共和国に渡って越冬します。ゾルザル・パルドは絶滅の危機に瀕しており、その生息地の保護が重要な課題となっています。



カカオは直射日光に弱いため、シェードツリー(日陰木)の下で栽培されます。生産国によってバナナの木だったり、カシューナッツの木だったりするのですが、この地域のカカオ栽培では、自然の生態系を崩すことなく、画像のようにすでに自生している木をシェードツリーとして、その間にカカオを植え栽培しています。



上部が折れてしまった木など、まだ生きている木に接木して、新たなカカオを育てていました。カカオ栽培を行っている現場での講義では、このようにどのような場所や木を選ぶか、その注意点など、生産地の取り組みを直に聞くことが出来ました。



最終日前日には、ドミニカ共和国屈指のリゾート地、カバレテに移動して半完成品と品質、味覚の講義。こんな素敵な場所での受講だけでも、気持ちがフワフワしそうですが、締めに総合テストが行われました。



久しぶりのテストで受験生に戻った気分。講師や参加者皆さんに助けてもらい、無事合格することができました。もっと英語力があったらと、毎度不甲斐ない思いをしていましたが、温かく見守っていただき、優しく接してくれた皆さんのおかげで、とても楽しく充実した時間を過ごすことができました。本当に感謝の想いでいっぱいです。



カカオは日本から遠く離れた国々で栽培されます。美味しいチョコレートが食べられるのは、生産者がいてこそ。作り手として、この事実をしかと受け止め、商品はもちろん、体系的にこの素晴らしさをお届けできるよう、これからより一層頑張っていこうと思います。



ゾルザルの素晴らしいカカオ豆を使った商品はオンラインストアで販売中



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